意志動詞・無意志動詞2019年01月15日 08:36

意志動詞は話者の意志によって実行される動詞で、無意志動詞は意志によらずに実行される動詞です。
 意志動詞の例   広げる  すぼめる  溶かす
 無意志動詞の例  広がる  すぼまる  溶ける
日本語の動詞に自動詞・他動詞という分類法がありますが、これは欧米語の概念をそのまま取り入れたもので日本語を整理するためには適当ではありません。
他動詞は「を格」とるが、自動詞はとらないと説明されていますが、「行く」のような「移動」の意味の動詞は自動詞なのに「を格」をとります。
 例 「山道を行く」
ここではその代わりに意志動詞・無意志動詞という分類を提案します。
欧米語に翻訳する時に陽に書かれていない主語を推定するときに、意志動詞の主語は1人称、無意志動詞の主語は2人称または3人称と推定できます。
 意志動詞は「を格」を取りますが、無意志動詞は取りません。

・慣用句の中で
意志動詞・無意志動詞という分類は動詞に固定的に決められるものではありません。例えば、「落とす」は意志動詞、「落ちる」は無意志動詞です。しかし、慣用句では変わります。
 「財布を落とす」、「命を落とす」は無意志動詞です。
慣用句は動詞の数の少なさを補完しているもので、まとめて一つの動詞として意志動詞・無意志動詞を決めるべきです。

・意志動詞・無意志動詞と助動詞との関係
  「(さ)せる」を「意志化助動詞」とします。
  「(ら)れる」を「無意志化助動詞」とします。
 これらの助動詞は意志動詞にだけ付きます。無意志動詞には付きません。
              意志化助動詞  無意志化助動詞
  広げる 意志動詞   〇広げさせる  〇広げられる
  広がる 無意志動詞  ×広がさせる  ×広がれる   
 五段動詞の可能形(無意志形)にも付きません。
  書く  可能形    ×書けられる
 ちなみに無意志化助動詞のもつ機能は受身、可能、尊敬、自発があります。全部無意志です。
 意志化助動詞が付いて意志動詞になった後ろには無意志化助動詞が付きます。これは使役受け身と呼ばれています。
  書かせられる    五段動詞
  食べさせられる   一段動詞

・意志動詞に付くが無意志動詞には付かない形式名詞
  ~ことにする
  ~しよう
  ~つもりだ

・意志動詞に付くが無意志動詞には付かない補助動詞
   ~てあげる    授与
   ~てある     現在完了している状態
   ~ているところだ 現在の行動
   ~てください   依頼
   ~てくれ     依頼
   ~てみる     試行する
   ~てやる     授与

・意志推量の助動詞「う」は意志動詞に付いたときに意志に、無意志動詞に付いたときに推量になります。

・意志動詞用法・無意志動詞用法
名詞、形容動詞、形容詞も「する」と「なる」を付けて意志動詞用法・無意志動詞にする用法があります。
          名詞     形容動詞   形容詞
 意志動詞用法   運動をする  元気にする  青くする
 無意志動詞用法  運動になる  元気になる  青くなる

・否定を伴った疑問文
否定を伴った疑問文の意味が意志動詞・無意志動詞とで異なります。意志動詞のときは勧誘に、無意志動詞のときは否定疑問になります。
 「はい」と答えたときの意味も変わります。
                    答え  意味
 飲まないか 意志動詞  勧誘     はい  飲む
 飲めないか 無意志動詞 否定疑問   はい  飲めない
                          以上

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